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2011年05月17日

東京電力の原発賠償策について(会計的な観点)

以前よりこの稿でも度々取り上げていました会計制度の大きな転換点として、上場企業に2015~16年に導入及び実施が義務付けられるIFRS(国際会計基準)は、従来のダブルスタンダードからトリプルスタンダードになります。

トリプルスタンダードとは以下の通りです。

現在の日本における企業会計は、99%の中小企業が採用している一般会計、つまりは会社法に基づいた会計基準に、税務会計、つまりは法人税法に基づいた課税所得をもとめて税金の計算まで行うようになっております。ここに上場企業会計、つまりは上場企業が採用する金融商品取引法に基づく投資家保護を前提とした会計基準があります。

中小企業は一般会計の結果と税務会計の結果は概ね一致するはずです。上場企業は一般会計、税務会計をワンセットと考えて、それに金融商品取引法に基づく上場企業会計があるという位置づけからいわゆるダブルスタンダードと考えます。

今後のIFRS(国際会計基準)導入により上場企業は、もうひとつの企業評価を開示することになるのでトリプルスタンダードになることになります。


さて、ここで本日のタイトルにもある東北地方太平洋沖大地震において発生した福島原子力発電所事故の賠償策について様々な議論がなされています。国策として新機構方式におけるスキームによる再生案、新旧分離式方式のスキームなど一般の企業再生のみならず、膨大な金額、処理が及ぶ賠償問題はいまだにそのスキームも方向性も確定しておりません。

そこで、現在の賠償問題の具体策ではなく会計的な観点からの問題をこの稿では取り上げます。

実は、最大のネックになってくることが前述の会計基準がトリプルスタンダードになるということなのです。

日本の会計基準では確定した債務(今回の東京電力の場合では賠償額が確定した場合)を財務諸表に表記、不確定要素は注記のみとなっております。国内の証券取引所でも、東日本大震災の影響で債務超過になった企業は上場廃止にしなくてよいという特例が認められるようになりました。

しかし、これはいずれも日本国内だけの話です。

IFRS(国際会計基準)が正式導入される4~5年後に一気に様相が変わります。

IFRS(国際会計基準)では、将来債務を可能な限り見積もり、早期に計上することが義務付けられています。本格的実施のコンバージェンス(収斂)期間からこのトリプルスタンダードに上場企業の会計基準が移行していくプロセスで東京電力を支える投資家への情報開示基準はより厳しくなっていきます。

現状における福島原発の安全な廃炉作業への工程表通りに進んだとしても、その賠償額を含めた将来的な債務が膨大なものになることは避けられません。

つまりは、国策で上場を維持できたとしても、結果的には増税や電力量の値上げ等の実質的な国民への負担増は避けられず、そこに上場維持においてIFRS(国際会計基準)適用になれば結果的には、上場維持はできないという結論は見えています。

会計的な観点からみると上場維持のためには、新旧分離方式のスキームが現実的ではありますが、これはあくまでも会計的な観点に過ぎず、この場合も増税や電力量の値上げ等の実質的な国民への負担増になることには変わりありません。



地域、環境、国民、経済、国際社会、様々な問題を長期に亘りクリアにしていくとしても、その前に会計的な観点から行き詰ることが見えています。



東京電力、政府の今後の対応策は困難極まるものが必要となってくるでしょう・・・
posted by core at 06:00 | Comment(0) | 会計
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