現代経営学のバイブルとも言える名著、「ビジョナリーカンパニー」の著者であるジェームズ・C・コリンズ氏は、企業衰退の五段階のなかでも衰退に抗うためのコリンズ五訓なるものを説かれ企業経営の羅針盤としてあるべき姿を指し示されています。
一発逆転を狙うな
近年、企業再生においてV字回復という言葉が飛び交ったときがあります。起死回生の一発逆転ホームランが飛び出してさも突然のように回復したような印象を与えますが、往々にしてこのV字回復には地道な企業努力の成果が実を結んだ結果であって、むしろ発信する側の巧妙なプロパガンダによるところも大きいのです。
経済なき道徳は寝言である
私が頻繁に引用する二宮尊徳氏が説かれた名言です。
コリンズ氏はこの企業再生における起死回生を必要ないと説かれます。これは平たく言えば必要ないのではなく、前回の稿でも説いた一発逆転は「幸運と偶然」の産物に過ぎない、つまりは不確実なものに傾倒するなということを説かれているのだと思います。
名経営者として名高いルイス・ガースナー氏がIBMを再生されたときの就任時のメッセージがこのことをズバリ説いています。
今のIBMに最も必要ないものはビジョンだ
コリンズ氏はこのガースナー氏の言葉の真意をこのように説かれています。
企業にビジョンが不要という意味ではない。まずは会社の健康状態を正確に把握し、問題点を明らかにし、早急に正す。新しいビジョンはその後にじっくり練ればいい。
まさにガースナー氏、二宮尊徳氏、コリンズ氏は全く同じことを説かれているのです。
現在、金融庁の主導で金融機関が積極的に取り組まれている金融円滑化法(モラトリアム法)の主旨もこれと同様で、まず止血、つまりは返済猶予をしたうえで、その後に事業改善計画及び資金計画を入念に策定するというものになっています。
そもそも一発逆転が成立する状況を思い浮かべてみてください。野球で例えるならば、四球、失策、安打、様々な方法で累上のランナーを溜めていくのです。そこには絶対に諦めない強い意志と、最後まで信じて疑わない勝利への執念は不可欠です。このような地道な成果の積み重ねが投手の不用意な失投を生み出し大逆転に繋がっていくのです。
最初から本塁打狙いの大振りでは累上のランナーを溜めることもできないのです。
「智恵と努力」の積み重ねが「幸運と偶然」である一発逆転を生み出すのです。
つまりここで説かれていることは堅実なものに勝るものはないということではないでしょうか?
ビジョンは、寝言は、堅実なことの繰り返しから生み出されるものであり、幸運と偶然から生み出されるものではありません。
2010年10月14日
栄枯盛衰〜Vol.2一発逆転を狙うな
posted by core at 05:10
| Comment(0)
| コンサルタントとして
この記事へのコメント
コメントを書く