先日、あるクライアントでの話です。この不景気の中、自分の都合で貸出先がない金融機関は、貸し倒れリスクが低い、いわゆる資金需要が特にない企業に無理やり貸出のお願いにやってきます。
九州のとある県の某第一地銀の話です。
支店長決済で実行できる融資限度額の目いっぱいを「必要ない」というクライアントの申し出も巧に交わし貸し出しました。このような銀行は、このクライアントの取引行でも数行あります。
手許に資金がダブつきます。
このクライアントは商社ですから、全国の情報網からお買い得の商材がでると買い付けます。結果的に在庫がダブつきます。
勿論これは経営者の判断ですから、銀行の融資と直接関連性はありますが、銀行の責任ではありません。借りる決断をしたのも、買い付ける決断をしたのも企業の責任です。
当初の当座貸越の返済期日がきました。返済します。
問題はその後です。
「また借りていただけませんか?」
現時点での試算表、運転資金での借り入れなので、直近の在庫(棚卸)表、短期(6ヶ月)資金繰り表をこちらの銀行の担当者の方が持っていかれました。
数日後、
「この資金繰り表で判断するととんでもない利益がでますよ!本当ですか?」
電話越しですが、血相を変えているのが容易に想像付きます。
【・・・仕入資金で調達した資金で商材購入したでしょう、そのため現在在庫が膨らんでいるのだから在庫表まで持っていかれたじゃないですか?仕入代金の決済が少ないのはそのためで、営業債権の入金と、営業債務の支払いの差額で利益が出るって言ってませんか?】
電話越しですが、ホッとしている様子・・・
クライアントの業績、資金繰り推移を1年は見ているはずです。ましては、新人行員ではありません。
景気後退が加速しています。金融機関の貸し渋り、貸し剥がしが巷では横行していると言われています。
現在の社会情勢では、政府肝いりの金融特別対策資金いわゆるセーフティネットなるものを活用して、“つなぎ融資”延命行為か?時間稼ぎか?問題の先送りのような使い方をされているケースもあると思います。
厳しい情勢だからこそ、手許の資金をどのように使うのか?をしっかりと見極める必要があります。本来その運用方法を企業の立場に立って的確にアドバイスすることこそが金融機関の使命ではないでしょうか?
社会インフラということで、バブル崩壊後の“失われた10年”のときも金融機関は政府から守られてきました。ゼロ金利政策、量的緩和を利用して、空前の利ザヤで経営基盤を立て直した結果がこのざまです。
モラルハザード(倫理の欠如)が著しい行員が多すぎます・・・
スキル不足の行員が多すぎます・・・
個人の問題ではありません。組織風土が行員という末端で表現される訳ですから、銀行そのものがそのような組織風土なのでしょう。
経済不況、長引きますよ・・・
社会インフラを担う銀行がこのような状態ですから・・・
2008年12月22日
とある銀行の話
posted by core at 07:00
| Comment(2)
| コンサルタントとして
一連の世界景気後退は産業構造及び産業インフラの破綻ともいえる事態だと思います。
目先の”利”を優先させて、真の”理”をないがしろにしてきた”ツケ”が表面化したのでしょう。
20世紀を代表する自動車産業、そして様々な金融業、自業自得ともいえる巨大になり過ぎた”欲”を制御できずに喘いでいます。
やはり人間は”恐竜”なのかもしれませんね・・・